槍穂縦走と大キレット3

9月27日(4日目)下山

最終日、夜の間降り続けた雨も止み、雲間から青空が覗いてはいるものの、しっとりと湿り気を含んだ大気に包まれた朝です。
今日は涸沢経由で上高地に下山するだけなので、ゆっくりと支度を整え小屋を出発。
昨夜、山談義の相手をしてもらった人たちは皆、それぞれの目的地に向かって早立ちしていったようだ。

ザイテングラートの岩稜を下り切り、ガレ場の下降に入った頃、腹に何とも言えない違和感を覚え始めた。有体に言えば出そうなのだ。
それもちょっと横尾あたりまで我慢できる感じではない。
実は今回の山行を通して悩まされ続けたのは、天候でも気温でもルートの険しさでも小屋の混雑でもなくお腹の調子だった。
自分の場合、通常二泊三日程度の山歩きでは都合よく便秘になり、それでいて違和感も無くトイレに悩まされる事は少なかったのですが、今回は一日多いというだけでトイレをどこで利用するか?という心配が気持ちの隅にひっかかってしまい、最初から下腹が重い感じで調子が悪い。で、ようやく通じ始めたと思ったら今度はノンストップだ。。
涸沢カールのガレ場の下りを自分でも驚くくらいのテンポで駆け下りる。
なにせ必死なので集中力は抜群で、いくら駆け下りてもバランスがくずれない。
先行する登山客が皆避けてくれる。すんません。
ようやく涸沢小屋が見えてきた。
涸沢小屋前の公衆トイレに飛び込んで事なきを得る。
危なかった。
やれやれ・・・・だ。

小屋のテラスで暫く休憩を取り出発。
横尾から涸沢までのルートは急登こそ少ないが長く、登りに取ると結構しんどい道のりなのだが下りは楽だ。
どんどんと下ってゆく。
本谷橋、屏風岩の前を過ぎると道は沢の高さまで降り明るい川原を歩くようになるが、この辺りの風景は自分が始めて涸沢を訪れた頃とは大きく変わっている。
以前このあたりは水際まで森が迫っている感じで、針葉樹の鬱蒼とした森の中を道が通じていた。登山道に巣穴を構えるオコジョに出会ったのもこのあたり。いまはその影さえなく、あっけらかんと陽光に照らされながら歩く。
横尾で大休止を取り、のんびりと「街道」を上高地へと歩く。
途中、法面工事中の作業場を占拠した猿の群れに出会う。
ここの猿はどこかのそれと違って皆おとなしいが
さすがにこの大軍だと仕事にならないのか作業員の人たちも苦笑いで眺めるだけ
こちらも苦笑い。

上高地到着14:30
平日にもかかわらず、本日も上高地は観光客で溢れていました。

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槍穂縦走と大キレット2

9月26日(3日目)キレットを超えて

さすがに布団一枚に二人とまではいかないものの、それなりに混んでいる寝床では快眠は無理、周囲はまだ暗いうちから騒がしく、寝ているどころではありません。
というわけで、自分も表に出てご来光を拝みます。

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みるみるうちに日が高くなり気温も上がってきた。
キレットへと向かう人たちは殆ど出発してしまったらしい
自分も縦走開始です。

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(快晴、縦走開始)

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(笠が岳、縞模様が印象的)

大喰岳、中岳と続くいかにも北アルプスといった感じの稜線上のアップダウンは危険ではないものの、ゴロゴロとした岩づたいに歩く感じで意外と歩きづらい。
ほぼ予定通りの時間で明るく開けた南岳小屋に到着。
大キレット超えを前にして大休止をとります。

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(南岳、彼方に富士山、いよいよ大キレットへ)

小屋前の広場から明るい尾根を少し登ってから岩伝いに急降下。
大キレットに突入です。

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(これが大キレットの全貌、矢印の場所が本日の中間地点北穂高山頂)

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(南岳を降り切って振り返る)

ザレた岩くずで歩きづらい急坂を下り、後は梯子を交えながら谷を向いたり山に向いたり体勢を整えつつひたすら下っていきます。
途中岩棚に佇んでいる単独君と情報交換、「長谷川ピークや飛騨泣きはそれほど難しくないが、北穂高への登り(あちらにとっては下り)と涸沢岳がきつかった」とのこと。
後で判るわけですが、私も同感です。

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(長谷川ピーク、りッジを乗り越えこちらに下る)

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(こんな場所もあったり)

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(飛騨泣き、ここは怖い)

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(飛騨泣き、ここもやばいトラバース)

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(北穂へのしんどい登り、振りかえると南岳にも縞模様)

南岳を降りきってから長谷川ピークに至るまでの鞍部は危険ではないものの、お世辞にも広いとは言えない稜線上を大岩を伝って歩かねばならず、あまり気持ちの良い場所ではありません。最低鞍部を過ぎ、しばらく登り一方になると、突然ナイフリッジを乗っ越す場所に出る。ここが『長谷川ピーク』
第一印象は「あれっ、思ったほど怖くない」。悪い場所にはしっかりとした足場が打たれており、慎重に進めば問題なし。ここまでの稜線歩きで馴れたのか高度感も腰が引けるほどではありません。しかしここに足場が打たれたのは最近のようで、以前は相当の難儀なルートだったろうということは容易に想像されます。
3畳程の小広場、A沢のコルを過ぎて壁にとりつく。
『飛騨泣き』の始まりです。
ここからは三点支持を保ってのひたすらの登り。
登るに従い増してくる高度感はかなりのものです。
途中両側が切れ落ちたコルをひょいという感じで超え、対面の壁をよじ登る場所があって、ここは結構怖い。思わず声が出てしまった。
そのすぐ後には横尾本谷側に数百メートル?は切れ落ちた断崖のトラバース。太い鎖とがっちりとしたステップが心強い、と思ったらステップは途中まで。あと数歩、岩窪につま先を突っ込んで歩く、油断しないようにとの配慮だろうか?。
滑りやすいスラブ状の窪を鎖をつかんで慎重に登りきると危険箇所は終了。しかしこの後も北穂高小屋まで延々とのぼりは続く。ここは小屋前に立つ最後の一歩まで文字通りの岩登り、普通詰めは階段だろ?と文句のひとつも言いたくなります。

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(矢印の場所、北穂高小屋、しばし休息)

小屋前の眺めの良いテラスにて、売店で買ったペプシと行動食の昼食休憩をとる。
近くで中年の女性グループと雑談していた単独の華奢な若い女性、どうやらこれからキレットを超えるらしく中年組はびっくりしていた。彼女はてきぱきと身支度を整え、あっという間に断崖を下って見えなくなってしまった。隣でカメラを構えていた男性と思わず見合って一言「すごいねえ・・・」まるでスーパーガール。

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(滝谷に向いたスラブの下り)

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(多分涸沢槍、荒々しい風景。雨が降ってきた)


雲が出てきた。
私も出発。
涸沢キレットに突入だ。
噂によると大キレットより難しいという説もある。
怖さの平均値が高いという人もいる。
難しいかどうかは何とも言えないが全体的に足場が悪い。
眼下の涸沢カールの風景は和めるが
一方で峻険を絵に描いたような滝谷側に身をさらす場所が多く、
ホールドが見つからないまま鎖を掴んで体を引っ張りあげるような場面が少なくない。
涸沢槍を過ぎるころから雨が降り出し、ガスも濃くなってきた。
体感温度も一気に下がるが、重ね着しようにもリュックを下ろす場所が無い。
涸沢岳は小さなピークが重なっていて、
ピークを登りきる度に霧の向こうにピークが現れ、
「偽ピークだったのか・・・・・・」とがっかりさせられる。
ようやく本当の山頂に到着したものの
そこに人影は無かった。

穂高山荘到着17:00
受付の女性にしっかりと注意されてしまった。
この寒さでは遭難もありうる。
まあ怒られても仕方ないわな。

やはり遅めの到着で同室となった男性と夕食をとりながらしばし山談義。
山なれた人らしい、毎週のように山歩きをしているそうだ。
大キレットの話をすると
ジャンダルム超えを薦められた。
キレットを超えられたのなら大丈夫だよ、との事。
北アルプス一般縦走路では一二を争う難コース、まあ今回は遠慮しておきます。
挑戦は次回に、ということで。

日が落ちて真っ暗となり、雨も激しくなってきた。
しばらくすると3人の登山者が到着。
聞けばまさに西穂高からだそうで、暗くなってしまった為、見知らぬ者同士で臨時のパーティを組んで下りてきたそう、当然ながら注意されていた。
さすがにこれで終わりだろう、と思っていたら外からガヤガヤと声がする。
しかもハングル?
韓国からの団体さんだ。
槍でも穂高でも、外国からの登山者が多いのは英語やハングルの注意書きがあちらこちらに貼られている事からも判る。
外国から、特に韓国からのツアーは日程に余裕が無いので強行軍が多い、
と聞いていたが成るほどそうらしい。
とはいえ皆さん特に騒ぐでもなく、おとなしく遅い夕食をとっていました。

時折強く屋根をたたく雨音を聞きながら就寝。
また寝付けません。。

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槍穂縦走と大キレット

「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、
数週間前までの酷暑が嘘であったかのように、朝晩涼しくなってきました。
街ではハナミズキの紅葉も進んで本格的な秋到来という感じです。

そのお彼岸に絡めた9月終盤の連休を利用して
北アルプス槍~穂高縦走をしてきました。
我が人生、前半生の集大成!という意気込みで3泊4日の山歩きに望みます(大袈裟ですね)

9月24日(1日目)アプローチ

前日までの雨の気配がまだ残り、台風の進路も気になる飛び石連休の中日。
本日は横尾山荘までなので普通に起床、あくせくしなしないで済むのが嬉しい。
通勤の混雑が始まった高速道路を京葉~首都高~中央と繋いで一路松本へ。
松本からは迷う事もない一本道をのんびり走って沢渡の駐車場に到着。
ここには無料の足湯が有るが、とりあえず帰りまでお預け。
バスに乗り換えて上高地に入り、出発は13:30。

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例によって上高地~明神~徳沢と“街道”を歩いて横尾に到着しました。
横尾山荘は改築したばかりのようでどこもかしこもピッカピカ。
カーテンを引いて半個室にできる寝床、そこそこ広い風呂、清潔なトイレ、収容力の高い乾燥室等々、どこを取っても水準を超えた快適さを持つ山小屋です。

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9月25日(2日目)槍ヶ岳へ

普段の生活リズムとはあまりにもかけ離れた山小屋時間の中では
かえって疲れが溜まることの多い自分ですが、横尾で目覚める朝は爽快です。
6時45分小屋を出発。
明け方曇っていた空も、槍沢を遡り、槍沢ロッジに着くころにはすっかり晴れ渡ってむしろ暑いくらい。本日の行程は槍ヶ岳まで。森林限界を超え身を隠す日陰もない槍沢をひたすら登り穂先を目指す、ここは初秋に訪れるのが正解でしょう。

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(槍沢の紅葉、ようやく始まったばかり)

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(槍が見えてくる。ここからがしんどい)

山荘にリュックを置き空身で山頂をピストン、山頂に立つのは今回で2度目。
雲海がきれいでした。

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続く。

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鳳凰三山

7月最後の週末を利用して南アルプスの鳳凰三山を歩いてきました。
夜叉神登山口の駐車場に車を置いて地蔵岳まで一泊予定のピストン山行です。
このコース、比較的急登は少ないものの、距離は長いです。
と言ってもここいら辺りはどこから登っても長いので仕方有りません。
ちなみに南アルプススーパー林道も以前は目も眩むような深い渓谷に沿って広河原まで車でいけたのですが、現在は夜叉神登山口まで。ここから先は一般車通行止めです。

稜線上に3軒、少し離れて1件の山小屋が点在するコースなので、宿泊の予約はせず時間配分を計算して今夜の宿を決めようと思っていたのですが、中間地点にある薬師岳小屋は満員で泊まる事が出来ず鳳凰小屋まで足を伸ばす。 が、途中、小屋への下り道を間違えて変なところに下りかけてしまい、冷や汗ものでした。
鳳凰小屋の受付の方には電話をかけまくってご迷惑をおかけしました。
それにしても此処は自分同様間違える人が大勢いるようなので対策の必要を感じる場所です。

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鳳凰小屋はこじんまりとして質素な小屋ですが、寝具はゆったりとしていて快適、若いスタッフもきびきびとしていて好感が持てます。難点を一つ挙げればトイレかな、最近はトイレの綺麗な小屋が少なくないので何とか改善してほしいところ。山小屋トイレ整備の国の補助は事業仕分けの打ち切り対象になっているようですが、日本が観光立国を目指す為にも是非推進して欲しい。

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翌日は昨日下りてきた稜線から小屋までの高度を登り返して地蔵岳へ、オベリスクは途中までは簡単な岩登りの要領で上がって行けるので登ってきました。中にはてっぺんまでよじ登ろうとするツワモノもいますが、私は遠慮しておきました。
地蔵岳から昨日道を間違えた観音岳を通って薬師岳までの稜線歩きは爽快の一言。
累々と重なる花崗岩、サングラスを掛けていないと雪目になってしまいそうなくらいまぶしい白砂にハイ松や石楠花がからんで、庭師が丹精込めて作った日本庭園のような風景。岩陰に咲く高山植物達も綺麗で癒されます。

帰りは長い下り。
時折現れる登り返しに息を切らし、だらだらとした下り道に足が悲鳴を上げ始めた頃、どうにか駐車場に到着しました。

さて、高速道路35kmの渋滞を抜け帰りついた下界は猛暑です。
僅か2日ばかりとはいえ山上の涼しさに慣れてしまったので、山から下りてきただけでこんなに暑いとは。。

何だか理不尽な思いです。

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GWは雨の至仏山

暦上GW最終日となる5月6日
単独で尾瀬至仏山へBCスキーをしに行ってきました。
好天から始まった今年のGWですが、前半は用事が続いて出かけられず、終盤に近づくにつれ雲行きが怪しくなってくる・・・
どうやら山登りに関しては雨男率高目のようです。

そんな訳で白馬乗鞍へ行く当初の予定を、折角北アルプスまで行っても景色が見えないんじゃあつまらない、との判断で尾瀬に変更しました。単独行は気軽に予定変更が出来る反面、こういう場合優柔不断になりがちです。

5日の夜に自宅を出発。連日の大渋滞報道が嘘の様に関越の下りはどこまでもガラガラでした。
途中SAでの仮眠を挟み鳩待峠に到着したのは6日の朝。例年連休前半は駐車場に入りきれない車が林道に並んで大渋滞となる鳩待峠ですが、この日は拍子抜けするほど車が少ない。

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それでも時折晴れ間が見える空に期待が高まってきます。

が、しかし。
登るにつれ次第に雲行きが怪しくなりはじめ、途中まで見えていた稜線もやがて雲に隠れてしまいました。
悪沢の頭まで来るといよいよ自分も雲の中、濃いガスと冷たい雨に遮られて頂上を伺う事はまったく出来ません。 早々と下山してくる登山者曰く「上は冬だよ~」とのこと。自分の前を歩いていた軽装の3人組パーティーも急傾斜の雪面トラバースを前に進むのをあきらめたのか引き帰して行ってしまいました。

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11時50分に頂上に到着。寒いうえに風を遮る物も無い頂上には10分と居られず、早々にムジナ沢めがけて滑降を開始。視界が遮られた急斜面を勘を頼りに滑り出すのは少々勇気が要る作業です。

ここの特徴として厄介な事に頂上直下の気持ちの良い斜面は目指す沢では無く、ムジナ沢を目指すには途中からかなり北側へ回り込まなければならないという事。視界が良い時なら、GW頃には一部が顔を出す夏道を右手に見る様に降りれば全く問題ないのですが、最初に来た時はこれが判らず、さんざん迷ったあげくビバークしました。で、今回もやらかしそうになってしまい、シールを貼り直して登り返すはめとなりました。
こんな事をしている間に雨雲は大分下まで降りてきたようで
ムジナ沢源頭部の大斜面も雲の中、雪の中から頭を出した針葉樹と薄墨色の雪のコントラストは水墨画のようでもありますが、風流な気分に浸る余裕はありません。

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斜面には先月末に積もったらしい新雪の残骸がところどころに残っており、一瞬ホワイトアウトで足がとられそうになるものの気温が低いせいか雪質自体は程々に抑制の効く柔らかいザラメ、ゲレンデの様な気持ちよい連続ターンで降りて行けます。
途中沢型の右岸から樹林帯に入り、少しでも傾斜の緩やかな雪面を拾いながら、木々の間を根回り穴に突っ込まぬよう慎重に山の鼻目指して降りて行きます。源頭部が豪快な大斜面だけに此所は少々嫌な場所ですが、湿原植物見本園を挟んで山の鼻山荘の真向かいにドンぴしゃり。
連休最終日で閑散とした山の鼻に到着したのは14:50。結局登りと同じくらいの時間がかかった事になります。

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ここから鳩待峠までは傾斜こそ緩いものの(途中まではXCスキー向きの平坦地)意外と長い道程。今年は雪が少ないのかところどころ木道や流れが出ているので途中から板をザックに括り付けツボ足で登っていきました。
時折水芭蕉が顔を出している場所も在るもののまだまだ「花芽」といった感じ、この時点では開花まではあと1~2週といったところでした、今頃はどうだろう~。

鳩待峠到着は17:40。途中休み休みゆっくりと登ったせいか思ったより時間がかかった印象です。
下山後は雨脚が強まる中、道の駅白岩望郷の湯で汗を流し帰路につきました。

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穂高に行ってきました

23日秋分の日に絡めた連休を取って穂高へ行ってきました。

沖縄や台湾のあたりに停滞したままいつ何処を通過するのか心配させられた台風も過ぎ去って、当日は台風一過の秋晴れ!と言いたいところでしたが、逆に湿った空気が呼び込まれたのか上高地一帯はどんよりとした雨雲に覆われて時折雷まで鳴る生憎の天気。山歩きは雨中のスタートとなりました。

夜行バス「さわやか信州号」から沢渡発のハイブリッドバスに乗り換えて早朝の上高地に到着。早々に装備を固めて槍穂高を目指す他の登山客を尻目に立寄り湯の営業をしている上高地温泉ホテルへ朝風呂を浴びに行く。何しろこれから下山までの3日間は風呂に入る事が出来ないのです。
雨は明神、徳沢と進むにつれますます激しさを増してくる。横尾辺りで小止みとなったのも束の間、終日降ったりやんだりの一日でした。

山小屋の混雑した寝床で熟睡する事が出来ず、寝苦しい一夜が開けた翌朝も雨がしとしとと降り続いており、広大な涸沢カール全体に雲が低くたれ込めている。2日目は南稜経由で北穂高に登り、涸沢槍、涸沢岳の稜線を縦走する予定でしたが、予定を変更してザイテングラートを通って白出のコルに直登するルートに変更しました。という訳で次々と出発してゆく他の登山客を見届けながらゆっくりと小屋を出発、昼のうちに次の宿泊地穂高岳山荘に到着してしまいました。

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雨が小やみになったのを見計らって小屋脇に聳える涸沢岳をピストン。驚いた事にこの雨の中北穂高方面から続々と登山者がやってくる。聞けば北穂高どころか槍方面から大キレットを越えて来たパーティーも少なくない模様。数或る北アルプスの登山道でも困難さで5本の指に入る難路をこの天候の中超えてくる人がこんなに多いとは・・・何だか複雑な気分になってしまいました。
やがて雨は止み、飛騨側から吹いてくる風に雲も流されて見事な晴れ間が広がってきた。到着時には空いていた山小屋も時間が経つにつれどんどんと登山客がやってきて大盛況となってきました。足下の悪い中苦労してやってきた開放感からか皆誰もかれも興奮していて、入り口の脇にしつらえられた素朴なラウンジに腰を下ろし、コーヒーをすすりながらそんな風景を眺めていると自然と眠くなってくる。「今夜こそぐっすり眠れるかな?」と思ったのだが・・・甘かった。
山小屋とはいえ快適に過ごす為のキャパは限られている。が、しかし、下界の旅館の様に「満室なので泊まれません」という事はあり得ないのが山小屋の常識。寝床に入った早々、わずか60センチの距離を隔てて始まったおとなりさんのイビキ攻撃をきっかけにまた眠れなくなってしまった。消灯して数時間後、あまりに寝苦しいので夜中起きだして外へ出てみる。凛として肌を刺すような冷気。晴れ渡った夜空に文字通りの満点の星が散らばり、天頂にかかる天の川がはっきりと見える。何だか得をした気分でした。

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翌朝は素晴らしい晴天!。なのに寝不足で頭が痛い。
最終日は奥穂高、吊り尾根を経由、重太郎新道を上高地に向けて一気に下降する長い行程だ。食堂で朝飯を取りながら窓越しに美しい朝焼けとご来光を眺め、一休みしてから装備を整えて出発する。
日本で三番目の標高を誇る奥穂高までは以前に登頂しているのですが、その先を歩くのは今回が初めて。ガイドブックやインターネットの記事等でらくちんの水平道と勝手に想像していた吊り尾根はなかなかどうして手強いトレイルだ。上高地を訪れた事の有る人なら、河童橋から眺める前穂高の屏風のような稜線に思わず感嘆の声を上げた事が有るに違いないと思うが、吊り尾根とはまさにこの屏風のてっぺん付近を端から端まで横切るようにつけられたトレイル、重太郎新道とはこのてっぺんの端っこから上高地まで一気におりてくる道だ。険しさが想像出来ると思う。途中岩場があったりスラブのトラバースがあったりと足を踏み外せばただでは済まない箇所も少なくない。しかも3日間の疲れと寝不足で息切れがひどく、時折ふらふらとするため今まで以上に慎重に歩く。
季美子平で小休止の際、非常食として持ってきたブドウ糖のタブレットを口に含むと疲れや頭痛が一気に解消してしまった。あまりの効き目にびっくりしました。
前穂高はパスして季美子平から重太郎新道の下山にかかる。上高地は見えているのだが何処までも急傾斜の道が続いてうんざりしてしまう。雷鳥広場、カモシカの立て場、岳沢パノラマと梯子や鎖場を交えて激しく下り続けるが逆に登ってくる人も多い。この道を登りに選ぶなんて、その発想がすごすぎる。
岳沢ヒュッテは数年前雪崩で倒壊。その再建工事中不幸にも小屋の主人が亡くなり再開のメドが立たなくなってしまったそうで、現在では積み上げられた石垣が城跡のような姿を晒すのみとなっている。丁度このあたりで正午。周りでは木陰でお弁当を広げている人が多い。前穂や西穂稜線の険しい山並みを近くに望めるこの場所は上高地から登ってくるハイカーも多く、小屋の再開が望まれます。
この後もうんざりする程下りが続き2時半に上高地に到着。登山口からバスターミナルまでの平地歩きが何とも長く感じられました。
帰りのバスの時間には余裕で間に合ったものの残念ながら温泉には入れず、ビジターハウスのシャワーを浴びただけでバスを待つ人たちの列に並ぶ。
面白いもので今回は前半天候が思わしく無く皆行動が制限されたことも手伝ってか、3日間顔を見続けた上帰りのバスまで一緒となった人がちらほら見受けられる。別段名前を聞いたり話しかけたりする訳でもないのだが何となく知り合いになった気分だ。

さて帰りの高速道路は大渋滞。深夜の新宿着を覚悟したものの運ちゃんどういう魔法を使ったか予定より早く着いてしまいました。

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厳冬到来

早くも本格的な寒さの到来と共に、街中のイルミネーションが暖かく感じられる季節となってきました。
ラ・ニーニヤは猛暑の夏、厳冬の冬と極端な気候の変化をもたらすのだそうで、「今年は寒さが厳しい」との長期予報はどうやら当たりつつあるようだ。
標高の高いスキー場では既にオープンした所も在るようで、雪の便りが年々遅くなる傾向に慣らされてきた感の在る昨今、これは事件と言って良いかもしれない。もっとも暖冬が続くほうが異常なのであって、この寒さこそ本来の冬だとは思うが。
そんななか早くも雪崩遭難のニュースが報道されている。

(以下引用)
北海道上富良野町の十勝岳連峰・上ホロカメットク山で、日本山岳会北海道支部のパーティーが雪崩に巻き込まれた事故で、死亡した札幌市厚別区、団体職員鈴木和夫さん(63)、同区、無職鶴岡節子さん(56)、同市中央区、会社員吉沢宣哉さん(60)の死因は、道警の24日の調べで、いずれも窒息死とわかった。
(以上引用)

日本を代表する山岳会である日本山岳会の会員、しかも北海道支部の会員であれば雪山の恐ろしさは熟知しているのでは?と考えるのが人情でしょう、私もそうです。もちろん遭難された方達も雪崩の恐れは充分認識していた筈で実際直前の小規模雪崩の発生を確認していた模様で、不安定な雪は落ちきったと判断したのでしょうが、それでも襲われてしまった。
亡くなられた方の御冥福をお祈りいたします。

危険回避の方法や知識を解説するガイド本や、セオリー通りに行動したとしても時として裏切られるのが自然の恐さ。山で滑る事を楽しみにしている自分も他人事ではありません。もっとも単独行で出かける事の多い自分の場合、雪崩を喰らったらアウトなのでもっぱら春山専門なのですが。

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西丹沢「マスキ嵐沢」沢歩き

葛葉川の余韻覚めやらぬうち、翌週は西丹沢のマスキ嵐沢を遡行してきました。

同じ丹沢の初級者向け沢登りではありますが、都市に近く、開けたイメージの表丹沢と山深い西丹沢とでは若干趣が異なり、沢もまた構成する岩石の違いなどからやや印象が異なっています。

このあたりの沢を構成する岩石は石英閃緑岩という花崗岩の仲間で、濡れるとかすかに青みを帯びることから「青御影」の石材名で呼ばれている。濃緑あるいは黒味がかった凝灰岩が多い表丹沢のそれとは異なり雰囲気は少し明るい。
「マスキ嵐」というちょっと変わった名前の沢は、険しすぎず緩すぎず、やや荒れた庭園の風情がこじんまりとして何だかとても美しい溪でした。

あいにく遡行を開始した頃から雨が降り出し、やがて本降りに。水量に影響を与える程ではないし、そもそもシャワークライミングなので関係ないと言えばそれまでだが、天気が良ければ木漏れ日が美しいに違いないと思われる場所も多いだけにちょっと残念ではありました。

さて前回出発が遅れた事を反省し1時間早く家を出たにも係わらず、やはりというベきか高速道路の渋滞にまんまと嵌り、さらに高速を下りてからの国道も延々渋滞して大幅なタイムロス。高速道路を下りてからのアプローチが短い表丹沢と比べると西丹沢はやや遠い。
箒沢の駐車場に車を停めて身支度を整えた後、中川川に沿って大滝沢出会いまで歩き、大滝沢から東海自然歩道を行く。先程来降り始めた雨が本降りとなり始めていました。
登山道(東海自然歩道)は、一旦大滝沢を離れ尾根を一つ越してから再び木橋で沢を越える。想像していたよりやや水量が多いような気がするが多分この沢がマスキ嵐沢であろうと判断し、沢靴に履き替えて遡行を開始。流れに沿って左に回り込むと大きな堰堤が表れた。
何の事は無い、まだ大滝沢の中でした。
ここで左岸に付けられた木道を登って行くと先程よりも水量の少ない沢に出会う。どうやらここがマスキ嵐沢であるらしい。良く良く目を凝らして見ると、消えかかってはいるものの岩に付けられたペンキマークも確認出来る。
スラブ状の沢床を少し登った後に表れるF1横向きの滝は、左岸からころがり落ちて来たと思われるマイクロバス程もありそうな大岩によって滝の右側が塞がれている。左側が易しそうなので登ってみるが上半分に手がかり足掛かりが無い。仕方なく流れに取り付き、盛大な飛沫を浴びながら登る。遡行開始早々のシャワークライミングとなった。
ガイドブックで要注意とされているF3はセオリー通り右側を慎重に越える。一見すべり易そうだが、想像していたより難しくはなかった。
この後もF4、F5と絵になる小滝をルートファインディングしながら超えていく。この間ブッシュや流木、岩と砂、植物が織り成す繊細な情景が絶妙で、仕事のネタになるのでは?と小休止を兼ねて写真を撮ったりしながら進むので余計な時間がかかってしまった。
F5を越えるとまもなく水涸れ、程なく顕著な二俣が現れる。右俣にはF6らしき涸れ滝が見えているのでここは右に、最後に現れるのがマスキ嵐沢最大F7の涸れ滝だがこれが曲者でした。岩が累々と重なるF7は遠目には一見何という事も無いように見えるのだが登りはじめると思ったより険しい感じ。それでも頭の高さにある棚までは見た目通り問題なし。で、ここには少々年季の入っている残置ハーケンとスリングがあるので、これを頼りにさらに登ろうとスタンスを探したところが見当たらない。一旦クライムダウンして眺め、再度上がってみるのだがやっぱり駄目。馬鹿みたいにこれを何度か繰り返した末、直登をあきらめて滝脇の踏ん張りの効かないザレの斜面を巻いて越えた。落ち口から覗いてみると最上部の岩がハング気味でボルトが打たれている。ザイルも無いのでここは巻きが正解だったのかもしれない。
F7から上はやや荒れた感じの階段状のゴーロが稜線へと続いている。もう滝は無いので岩に腰掛けてで靴を履き替える。
しとしとと落ちる雨に煙る谷を眺めながらの大休止、稜線で風に吹かれながらのそれとはまた一味違う。
登攀的な沢ではこんな呑気な感慨を抱いている余裕はないでしょうが・・・

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先程から感じていた足下の違和感が現実に・・・
稜線に出るまでの腐葉土の斜面でトレランシューズのソールがばっくりと口を開いてしまった。葛葉川でもソール先端に表れていた僅かな剥がれが気にはなっていたのだが、一気にぱかぱかに。長らく靴箱に入れっぱなしで手入れもしていなかったツケが廻って来た格好だ。
仕方ないのでだましだまし登り、稜線に飛び出す。飛び出した場所は痩せ尾根で、勢い良く飛び出した拍子にそのまま反対側に落ちてしまいそうな場所だ。しかもガスが濃く、下が見えないので余計に不安感が募る。
以前甲斐駒の稜線で登山靴のソールが剥がれた教訓から細引きでソールを固定してから下山を開始。ガイド本でも要注意とされた権現山から続く下山道は両側共スパッと切れ落ちた痩せ尾根や、閃緑岩が風化した真砂土まじりの滑り易い道が続くかなりの悪路、道があるだけマシと言えばそれまでだが、はっきり言って沢の中より緊張の連続でした。
小一時間の道のりで西沢まで下りて来て一安心。一般登山道にしてはやけに荒れているなあと思いながら歩いていたのだが、登山道の入り口には「作業道につき登山禁止」と書かれた真新しい看板が道を塞いでいる。荒れているのも当然で、どうやら本当に廃道となっているらしい。
マスキ嵐沢遡行の唯一の下山道がこれ以上荒廃しない事を祈ります。
この後は水量の豊富な西沢を縫う様に付けられた道を拾いながら歩き、西丹沢自然教室前に到着して下山完了。三連休のど真ん中、川沿いのキャンプ場ではオートキャンプを楽しむ人達で賑わっていました。

遡行日:9月23日 曇りのち雨、のちくもり

070923_masukiarashi02(一見簡単そうなF7だったが・・)

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葛葉川にてシャワークライム

ラニーニャの悪戯か、着実に進行する地球温暖化の成果なのか、厳かった残暑もようやく終わりを告げ10月の声と共にすっかり秋めいてきました。
9月初旬に職場が変わって暦通りに休みが取れるようになった事も有り、連休の一日を利用して沢登りの入門コース、表丹沢葛葉川へ行って来ました。

沢登りは20代の頃、秋川盆堀川や房総三石の桑の木沢を遡行して以来縁が無かったので道具も一から揃えなくてはなりません。が、これがなかなか楽しい作業。
かつて渓流遡行と言えば地下足袋+草鞋というのが当たり前で、同じく地下足袋の底にフェルトを貼ったものが釣り用として出回っていた程度。私も前述の沢登り入門の際はホームセンターで購入した地下足袋に釣り具店か何処かで購入した草鞋を履いて行ったのものですが、現在はキャラバン社やモンベルなど数社から化繊フェルト、ゴートフェルト、ステルスラバー等の素材を使用した登山靴スタイルの渓流シューズが発売されており、どれを選ぶかはよりどりみどり。乾いた岩に抜群のグリップ力を発揮するというステルスラバーも興味が有るが、今回は値段が手頃なキャラバンの柳又フェルト底を購入。ヘルメットは以前REIの通販で購入したまま使う機会も無くタンスの肥やしと化していたカンプの白い定番ヘル。フリーサイズで帽体とハンモックの空きが大きく、被ると頭の上にちょこんと乗っかる感じ。ザックはモンベルのメッシュバックに防水袋を組み合わせる大きめなデイパック。他にはネオプレンのスパッツ、グローブ、ソックス、シヤワクラ専用のタイツ、発水性能にすぐれたアンダー(これは優れもの)等を新たに購入。用心の為カラビナ、スリング、ツェルトなど。下山用には以前ハセツネにも履いて行った使い馴れたトレランシューズを用意しました。一方初級者向けの沢、しかも単独行という事でロープやハーネスは持参しません。

最近は遠方の山や海まで車を転がして行くのがやや億劫になりつつある自分ですが、東京湾と多摩丘陵?を隔てているとは言え丹沢は地元と同じ南関東、と言う事で随分と気分は楽。のんびり7:00に千葉を出発したのだが、この日は三連休の中日、早々に高速道路渋滞の洗礼を受けた上に登山口の菩提でも道が解らず大いにタイムロス。入渓点の葛葉の泉に到着したのは9:30を回った頃でした。いくらなんでも遅すぎか?。

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(団体さんで大賑わいの葛葉の泉)

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(水量多め?)

名水100選にも選ばれているという葛葉の泉は大変な人気で、ひっきりなしに観光客がやって来ては水を汲んで帰って行く。川は一週間前の台風の影響がまだ残っている様で地元のおじさん曰く、いつもより増水気味との事だが、私自身は初めて来た場所故比較対象が無く多いのか少ないのかハッキリ言って良く解りません。

AM10:00観光客を横目に身支度を整えて出発。林の中を少し歩いて入渓すると早々に登り方が解らない滝が表れゴルジェの中で立ち往生。「入門用の沢じゃなかったのかよ?」とぼやきながら高巻いてみるが下り口が解らない。しばらく薮の中を右往左往した挙げ句川に戻って膝まで釜に入り流芯に取り付いてみると意外と簡単に越える事が出来た。この後もF2横向きの滝、F3幅広の滝とホールド、スタンス共豊富な滝を気持ち良く越えて行くが、事前の情報で難しいと聞いていたF5板立ての滝は一瞥して高巻く。
この辺りで少し前から抜きつ抜かれつしていた単独行の初老の男性が追い抜いて行った。先程よりこの人、岩上に腰掛けて何やらほら貝の様な物を吹いたり念仏を唱えたりしていたのだが、F6中段の滝壷ではパンツ一丁になり滝に打たれ始めたではないか。修験者なのか?
滝修行に没頭する初老の男性を横目に林道手前のF7曲がり滝に取り付く。一段目は簡単だが2段目は増水した水が樋状に落ちており登り方が解らない。既に中段まで登っているので下りることも出来ず逡巡していると先程の山伏氏が追い付き「私が先に行きましょう」と先導してくださった。どうやらホールドスタンスが増水した水流に隠されてしまっていた様で、へつり気味に取り付きそのまま水流の中を飛沫を浴びつつ直登すると思ったより簡単であった。
ここで下山するという山伏氏に「お気をつけて」と挨拶の言葉を掛け、再び1人となって登りはじめる。
この後もそれなりに登り応えのある小滝が次々と表れなかなか侮れない。確かに突出して大きな滝が在る訳でも無い葛葉川は初級者向きではあろうが、私の様な初心者にとっては決して簡単な沢では無い様だ。でもそこが面白い。ささやかながらも堂々としたアドベンチャーなのだ。此所まで登る頃には水に濡れながらの遡行がすっかり快感になっていた。
F10富士型の滝を前にして一本取りつつふと靴に目を落とすとベロの隙間に挟まった何やら茶色の物体が・・・ヒルだった。良く見ると靴だけでは無くスパッツの隙間にも何匹もの小さなヒルが取り付いているではないか!!。表丹沢=山ヒル天国という噂はどうやら本当だった。始めてのヒル体験に驚愕しつつ暫くはヒル退治に没頭する(一匹だけ見落としていた事が下山後発覚するのだが)。
最上部のF13はスラブ状で、立っている為直登出来ず、脇の乾いた岩場を巻気味に越えて行くのだが上部のスタンスが広く嫌な感じ。本来ならこの辺りから水涸れの筈だが、増水の為かどこまでも流れが続いている。名残惜しいが本流を離れ、テープの指示に従って枝沢に入る。暫くガレをよじ登り、適当な場所で平行する小尾根にトラバース、小尾根には思ったよりハッキリとした踏み跡が付けられていて正直ホッとした。
先程の枝沢の源頭部とおぼしき小広場を右手に臨み、杉の人工林の中に細々と続く踏み跡を登りきると、ひょっこり三の塔に続く登山道に飛び出した。

この日、下界は晴れていたが稜線はガスが出ていて寒かった。寒いので早々に休憩を切り上げて下山を開始。二の塔までは整備された登山道が続くのでトレラン気分で少し走ってみる。

丹沢周辺では以前から特有の地質とオーバーユースによる登山道の荒廃が問題となっており、一部では修復の跡が痛々しい。主稜線を巡る道ははそれなりに整備されているものの二の塔から葛葉の泉への下り、俗に言う「馬鹿尾根」は何ら手を付けられていない様で荒廃が著しく、滑り易い泥道や薄暗い人工林の斜面にかなり消耗する。
18:00すでに薄暗くなり始めた葛葉の泉に到着。
驚いた事にこの時間でも(当然街灯も無く真っ暗)水を汲みに来る人が引きも切らない。軽トラやカブに乗ってやって来て大量に汲んで帰って行く。自分も空きペットボトルに水を汲んで持ち帰る事にしました(美味しい水で人気の高さもうなずける)。
下山後秦野の日帰り温泉で汗を流しているとふくらはぎの裏から出血しているのを発見。下山時に履き替えたソックスも血で染まっているではないか。この時は痛くも痒くも無かったがどうやら小さなヒルに血を吸われていた模様。くわばらくわばら。
9月16日 晴れ(山中曇り)

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(枝沢源頭にて、宝石の様な虫)

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(馬鹿尾根下山中、唯一気持良い場所)

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大弛峠〜金峰山

8月に入り記録的な暑さが続いた今年の夏。
下界では茹だる様な酷暑の一日、奥秩父の名峰、金峰山へ大弛峠からの往復縦走で登ってきました。

盆休み中とあって道路はかなりの混雑が予想されるので早朝5:30に自宅を出発。案の定中央高速の渋滞に巻き込まれたものの、小仏トンネル〜相模湖あたりで始まった恒例の大渋滞は早めにかわしてぎりぎりセーフ、笹子トンネルを潜って甲斐の国へ到着しました。大弛峠へは勝沼から塩山、牧丘と甲府盆地をまるまる横断したうえに杣口林道から峰越林道へと20キロ近く遡ることになります。この間往路はほぼ全線にわたって登り、当然ながら復路は下りです。林道とはいえ山梨側に限れば完全に鋪装されているので自転車で下ったら最高に面白そうな道、ペダルを一度も漕がないで里まで戻れてしまいそうだ。

お盆休み期間中とあって狭い峠の駐車帯は既に満車状態、仕方なく少し下がった場所の路肩に駐車する。道路の反対側は風化しかけた花崗岩の大岩がごろごろと積み上がった崖、落石でもあればひとたまりも無いがまあ仕方なかろう。

峠から金峰山頂へは約2時間半。金峰山直前までは奥秩父らしくアップダウンの有る森のトレイルだが、短いながらも時折現れる露岩の稜線やガレ場が縦走の良いアクセントとなって飽きさせない。
とは言え過去には事故も起こっているらしい、油断は禁物だ。

金峰山頂周辺は森林限界を超えており露岩地帯となっている。
看板が無ければうっかり通り過ぎてしまいそうな印象の山頂から少し下がった場所には金峰山のシンボル、五丈岩が巨大なモニュメントのような姿で聳え立っており実物は写真で見る印象よりも随分と大きい。
花崗岩の巨石が累々と積み重なった五丈岩は一見登りやすそうな感じで実際登っている人もいるが反対側は絶壁なので見ていてヒヤヒヤする。

しばらくは山頂を吹き渡る心地良い風に吹かれてのんびり大休止。生憎富士山やアルプスは雲に覆われているものの、山頂からの展望は360度遮る物も無い。
眼下の尾根上に望むにょきにょきと奇っ怪な岩の集積は瑞垣山。以前登った事が在る山だがここから見えるその姿はあたり一面林立する花崗岩のありふれた岩峰の一つに過ぎない様にも見える。


背後の岩の高みに一羽のカラスが留まり空に向かってカァーカァーと鳴きだした。こんな山の上にも里のカラスが上がって来るのか・・とぼんやりと考えていると何処からともなく二羽の鷹が表れカラスにちょっかいを出し始めた。
上昇気流にのって舞い上がり、ゆっくりと旋回すると風を切って急加速、どんぴしゃりカラスの頭をかすめて飛び去る。これを執拗に繰り返されてさすがのカラスコもたまらず飛び立つと間髪を入れず鷹が急降下、激しい空中戦のまま下界に消えて行った。
野鳥達の空中戦ショーを見届けて下山開始。登って来た女性の単独登山者とすれ違いながら挨拶がわりに言葉をかわす。今から登りでは少し遅いのでは?と思ったが今夜は山小屋泊まりだそうだ。いくつものケルンが積まれた金峰山の肩からは足下にこじんまりとした金峰山荘、稜線の先には関東のクライミングのメッカ小川山や廻目平周辺の山々、その先に八ヶ岳、はるか彼方まで続く関東山地の山々が望まれる。

さて、下山とは言ってもそこそこのアップダウンが有るトレイルなので結構疲れる。
峠にはまだ十数台の車がおり、そのうちの何台かはオートキャンプモードに突入中。う〜んなかなか楽しそう。
帰りの林道からは雲が晴れ夕日を浴びた富士山が真正面に臨める。
思わぬ赤富士にちょっと得をしたような気分でした。

下山後は牧村町立の温泉施設「花影の湯」に立ち寄って汗を流し、
お盆休みのUターン大渋滞にがっぷりと嵌りつつ翌朝帰宅しました。

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