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田母神論文問題

航空自衛隊の田母神前幕僚長の懸賞論文と、それに対する処分&顛末のドタバタが話題を呼んでいる。
戦前日本の植民地経営、戦争に至るまでの歴史認識、解釈に関して、現役の空幕長が政府、防衛大臣と異なる私見を幕僚の肩書きの下に公に開陳し、部下にも影響力を行使していた問題。幕僚の更迭まではご本人も覚悟していたらしい。(とはいえ今となっては単なる言い訳か否かは不明だが)
シビリアンコントーロルの原則を厳格に適応させるなら、当然更迭の後は懲戒免職という流れになるのだろうが、防衛庁側としては定年退職という形で穏便に処分を行えば、空幕長という立場をわきまえておとなしくしてくれるとでも思ったのかもしれない。身内に甘いと言えなくもないが、そんな「武士の情け」も当の本人にはさっぱり通用せず、退職金もいただき主張もそのまんま。今のところは田母神氏の方が一枚上手だったというところか。

一体どのような論文なのかと思いインターネット上にアップされていた全文を読んでみた。
世の中の大勢に対するアンチとしての意見なので、独善的、過激になるのはわからないでもないが、如何せんバランスが悪い。書いてある事全てが間違いとは言わないまでも、ご都合主義的というか、綺麗事に走り過ぎと言うか、ナルシストの自慢話を聞かされているような居心地の悪さを感じてしまう。いわゆるヘタレ保守、ネットウヨクなどと言われている人達はこういった文章を読んで気持ちよくなってしまうのだろうが、私にはちょっと理解出来かねる。文体としては上品で文脈も一応通っていると思うが、別段目を見張るような新事実が書かれている訳でもなく、何処かで見たような、どこぞのブロガーの戯言のような、ワイドショウのコメンテーターの言葉を借りれば「聞きかじりの集大成」のような虚実取り混ぜた印象の論文、というより感想文のような文章で300万円の賞金をちゃっかり頂いてしまうというのはどうなの?という感じではある。
おまけに退職金までしっかり頂いて、なんだか公人感覚に乏しい半面、立ち回りの上手い人だなあという印象だ。

そもそも国家や人類集団同士の思惑や欲のぶつかり合いが昂じておこるのが古今東西戦争というもの。ショッカーと戦う仮面ライダーでもあるまいし、正義と悪の色分けなんて実際には出来る筈も無く、ただ苦しみと悲劇が有るのみ。今時、戦前の日本の行い全て悪だったなんて考え方をする日本人がいるとは思えず。どこから聞き齧ったのか「自虐史観」などというイヤラシイ言葉を得意げに語っている人々には、脳内妄想が人間の特権だとしても、いいかげんにしとけよ。という感じだ。

この話に関して石破前防衛大臣が大臣時代、直接本人に注意を与えていたことが報道されている。『いいですか。あなたは一個人、田母神俊雄ではありません。私の幕僚です。政府見解や大臣見解と異なることを言ってはいけません。いいですね』と釘を刺したのだそうだが、「軍人が自らの思想信条で政治を糺そうとするのは憲法違反以外の何物でもない」
とも言っている。これに関しては石破氏の意見に全面的に賛成だ。

それにしても問題の懸賞論文を募集したアパグループの胡散臭さは一体何なのか?
アパといえば正直あまりお似合いとも思えない帽子がトレードマークの女社長と耐震偽装。偽装発覚で当の社長が帽子を取って謝罪した映像がおなじみだが、安倍元総理や森元総理らとの怪しげな蜜月が噂になりながらもいつの間にか立ち消えとなってしまったのは、どういう訳だろうか。
以前から談合の噂が絶えない感も有る防衛庁がらみの公共事業。
一企業の思惑に国防の責任者がまんまと利用され、文民統制の根幹が揺るがされる事態になっていたとしたら・・・・・

余談だが新聞の記事を斜め読みしながら懸賞論文を募集したのが元社長、つまり帽子のおばちゃんだと思っていたのだが、よく読んでみたら「元谷社長」苗字だった。

以上の話はひとまず置くとして、以前アップした「貧民の帝都」を読んでみて感じたのは、歴史には日の当たる場所もあれば光の当たらない闇もまた存在するという事。光の当たる場所は誰もが知っていても闇は見えず感心すら払われない。
文明開化から敗戦にいたる道のりで語られてこなかった影の部分がまだ残っているなら、良い部分も悪い部分も知っておきたいものだ。

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