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謎とき日本近現代史

最近の出版界では新書版の刊行が静かなブームらしい。
講談社から発刊されている「講談社新書」には、地理、歴史ものの調味深いタイトルも多く、読書欲をそそられるが、最近読んだのが表題の「謎とき日本近現代史」野島博之著。著者は某予備校で日本史を教えている人らしい。全体的には講議の内容をそのまま書き写したごとく平易な文体の語り調が特徴。明治維新による武士の凋落に始まり、第一次石油危機に至るまで著者による主観を極力避け、相互に連関して決して単純では無い歴史の流れの全体像を、各時代区分を代表する事件、世相を軸にトピック的に解説して行く。それぞれのトピックについて突っ込み深く理論を展開している訳では無いが、少し引いて全体を眺める様な論点はなかなか良く出来ているし、何より平易で楽に読めるのが良い。

長い不況や長期的な国力減少に対する漠然とした不安。中韓で広まる対日強行路線や反日デモ、憲法改正問題や国連常任理事国入りに対する逆風等々日本を取り巻く情勢は厳しく、それに対する不安からか日本人のアイデンテティを求めようとするあまり懐古的な歴史観に嵌る人も少なく無いと思うが、そんな人達にとっても本書は正しい歴史解釈の必要性を感じるツールとして役立つかも知れない。インターネットの掲示板に政治的な発言を残すなら最低このくらいの予備知識を持って臨むべし、という感じでしょうか(自戒的意味も込めて)。

本書の中で私自身が興味深く感じたのは戦前における政党政治の弱体ぶりと戦前にも有った憲法(解釈)論儀に関する記述だ。
読後の全体的な印象として、日本が戦争に突入して行った最大の原因は詰まるところ戦前における政党政治のぜい弱性、議会の外にある枢密院や軍部といった船頭の多さ、天皇大権の解釈の変化、それらの根本を為す明治憲法の(現代的な視点から眺めたところの)危うさに有る。まあ現代においても政党、政治に対する不信感は根強いわけだが、明治憲法下では政党自体が今日の様に保証されたものではなく、故に政党内閣は常に不信任の危機に晒されて深刻な政策の誤りも生じやすくなり、それが国民の不信感を増大させ、軍部台頭への漠然とした期待感が醸成される、といった流れだ。

国民主権の考えが明文化されていなかった明治憲法下において、天皇を国家の最高機関として憲法のコントロール下に置く事により、相対的に生じる民主主義を主張した美濃部辰吉の天皇機関説や、普通選挙の重要性を説いた吉野作造の民本主義などによって「大正デモクラシー」が花開いたのも束の間、民本主義を代表するべき政党政治の自壊によって政治面では軍部による発言力の増大と予算の突出、思想面においては天皇主権説が勢力を増して行き、戦争への連鎖反応が進むのにさしたる時間はかからなかった事になる。

昨今憲法改正が大きな議論となっている。自民党のそもそもの党是は自主憲法制定だし、民主党もその自民党から移った人が多い以上、憲法改正の主張が出て来る事は何ら不自然では無い。私自身も仮に憲法条文に不備が在れば改正をタブー視するべきでは無いと思っている。しかしこの本を読んだ後、終戦直後の憲法制定の時代に想像力を働かせてみると、日本国憲法制定時多くの日本人がこれを歓迎したというのも、勿論戦争に負けたからではあるが単にそれだけではなく、それが果てしない戦争に突入する以前、日本人自らによって想起されていた内容の具現化であったからであり、それを可能にしたのはワシントン条約締結以降、大平洋の向こうから日本を注視し続けたアメリカの緻密な計算と研究によるものだったのではないだろうか?と感じられるのだ。

くり返すが日本国憲法は、制定の経緯はともあれ、また戦争放棄の規定は置くとして、その内容は戦前日本人自らの手によって研究されながら遂に実行する事が出来なかった諸々の事柄を戦勝国アメリカの手を借りて実行に移したのに過ぎず、決して世の多くの人が思う様に押し付けられた物では無いと解釈する事も可能だ。その辺はしっかり頭に入れておくべきではないかと思う。

nazotoki-nihonkingendaisi


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