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キング・アーサー

050205_king_arthur最近DVDが発売された『キング・アーサー』
聖剣「エクスカリバー」を振って戦うブリテン(=ケルト=ウェールズ人?)の王アーサー。円卓の騎士、聖盃伝説、魔法使いマーリン等ファンタジーとしてのアーサー王伝説は有名だがこの映画はちょっと趣向が異なる。



伝説に彩られたファンタジーや中世騎士道物語的なアーサーを期待すると外される。しかしながら実際のところアーサー王がいつの時代のどの様な立場の人だったのかはハッキリしないし、そもそもアーサー王伝説自体フランスブルターニュ地方に住むケルト人によって作られたもので(by世界不思議発見)実在したのかどうかも定かでは無いらしい。

諸説ある王の由来中、信憑性が高いと言われているいくつかの説。

■ローマ帝国支配下のブリタニアにおけるブリトン人の首長説。

■ローマ帝国支配下の東欧サルマート出身者によって構成されていたブリタニア守備隊の司令官「ルキウス・アルトリウス・カストゥス」乃至その名跡を継いで異民族の襲来に抵抗したブリトン人の首長説

等を元にして組み立てているようで、作品なりにアーサー伝説に対する一つの仮説と成っているところが面白い。いずれにせよ歴史ファンの私としては伝統的なファンタジー的アーサー王物語より興味を引かれた事は間違い無い。

ファンタジーでもなく完璧な史実でもないという位置付けが中途半端なのか思ったより映画の評判は良く無いようだ。物語の出来は実際鑑賞する人達の主観に任せるとして(私自身は面白かった)今日のイラク戦争におけるアメリカの姿になぞらえる向きも有るがそれはとれはともかくとして。
製作サイドの肩を持つと言う訳では無いが、日本人には分かりにくい物語の背景について後日調べた内容、あるいは「?」と感じた部分についてちょこっと書いてみる。

外国映画では文化的、宗教的にネイティブな人間でないと良く理解出来ない、あるいは?で終わってしまうような、それでいて物語上重要な史実や隠喩が良く登場するらしいのだが。この映画では古代ローマで実際に起こったカトリック教会の神学論争が物語上重要な鍵となっているらしい。

初期ローマカトリック教会におけるペラギウスとアウグスティヌスによる神学論争。人間の善性と自由意志による救済を唱えたペラギウス派は論争の末異端とされてしまうが、映画の中でアーサーはペラギウスに師事したキリスト教徒として描かれ、仲間(円卓の騎士)の自由と自らの信じるローマの大儀の為に、アウグスティヌス派の布教の為にブリタニアに派遣されて来た(これは史実らしい)司教ゲルマニウスからの過酷な命令に従って戦うものの、敬愛して止まない故国ローマからの精神的な裏切りによって帰るべき場所を失い、グエネビアやマーリンの誘いを受けて(多分受けなかったとしても)自らのもう一つの故郷であるブリテンに留まる事を決意する(映画の中のアーサーはローマ人司令官とブリトン人の混血)。
この宗教心と自らの出自へのこだわりがアーサーの行動の原動力であり、レギオン(ローマ軍団)撤退後、たったひとりハドリアヌス長城に残ってサクソン軍を迎え撃つと言う一見無謀としか思えない決断に繋がっている(として描かれている)。
これは異端とされた後のぺラギウス派がブリトン人やケルト人の間に広まって行ったと言う史実が反映されているらしい。
DVDではディレクターズカットとして冒頭に少年時代のアーサーとブリテンで布教中のペラギウスとの交流場面が追加され理解を助けている。

とは言ってもロードショウ公開の時には私自身別段考えも無くアクションに酔っていただけだったのですが、、、

全体的には良く知られた伝説としての物語りと史実としてのリアルさとの按配加減にやや無理が感じられ、歴史劇として見ると安直さが拭いきれないものの、
清楚でありながら時に凛々しく男顔負けの活躍を見せるグエネビア役のキーラ・ナイトレイはGOOD JOB。

一方映画的なディテールの嘘や脚色をいちいち上げつらってもきりが無いが。

撮影上の都合からかアーサーと円卓の騎士達の乗る馬には鐙が装着されているが、5世紀始めのローマにはまだ鐙は無かった筈、鐙が中央アジアの騎馬民族から東ローマ帝国にもたらされたのは西ローマ帝国滅亡の後ではなかったかと思う。
この様な細かい考証部分の嘘というか妥協は、気になる人間にとっては案外気になるものだ。

昨日、『アレキサンダー』を鑑賞。さすがは"社会派"オリバーストーン、と感心。
長いが見応えのある作品でした。感想は後日。
長文で失礼しました。

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