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ETV特集『ロシアから見た日露戦争』

一昨々日。NHK教育TVで放送されていたETV特集『ロシアから見た日露戦争〜』というドキュメンタリーを見た。
普段あまり語られる事のないロシア側から見た日露戦争の実体と世界史に及ぼした影響を、ロシア軍の将兵、従軍司祭の書簡、報道資料、機密文書、皇帝ニコライ二世の語録等を通して紹介してゆくと言う内容。関係者の子孫へのインタビューや当時のニュース映像等を挟み淡々とした構成ながらも、なかなか見応えの有る番組でした。
日露戦争といえば「勝利に涌く東京中に提灯行列が溢れていた」と、とうの昔に他界した祖母が少女時代に体験していた記憶を母親を通じて聞いた事が有るのみ。今や当時を知る人は殆ど生存していないことから、語られる事も少なく、ともすれば日本海海戦の勝利など、富国強兵に一丸となって邁進する明治日本への憧憬の対象として美しく語られる事も多いと思うのだが、実体は言う間でも無く、古今東西共通の悲惨な戦争そのものであった。

旅順港や奉天を巡る戦いでは、双方併せて10万にも及ぶ戦死者を出し、銃声や砲声が鳴り止まない戦場で明日死ぬかも知れない恐怖におののきながら故里の家族を思い、次第に国家や皇帝への忠誠心が揺らいでゆく様子を、残された手紙や回想の文面は語っていた。
バルト海を出航したバルチック艦隊も出航早々から誤報による漁船や味方への砲撃によって指揮系統の乱れと操船能力の未熟さを露呈、一向に届かない皇帝の命令を待ちながらの長い回航のうちに士気も低下、遂に対馬沖に到着した時には救援すべき大平洋艦隊はすでに無く、あえなく日本艦隊の餌食となったのでした。
一方国際社会の仲間入りと不平等条約の改正を悲願とする当時の日本は、血みどろの戦いを繰り広げながらも戦争に対して一定のモラルを保っていた様で、帰国を許された将兵達が敵国よりも自国の皇帝への憎しみを募らせ、革命に繋がっていったのかもしれないと思わせるエピソードも紹介されていた。
また、スイスに亡命していたレーニンをはじめとする革命家達に、日本政府から現在の金額で60億にも及ぶ資金援助が密かに行われていたという秘密工作の存在。明治政府とボルシェビキ活動家達との共生関係の事実も、もしかすると歴史に詳しい方々には常識なのかも知れないが(私には)驚きであった。
アジア諸国を巻き込んだ教科書問題は記憶に新しいが、思うに我々現代人は僅か100年前に起こったこの出来事の本当の姿を、社会を、人々を何も知らないのでは無いかと思う。もっとも知らない方が幸せなのかも知れないが。

最後に紹介された帰還兵の息子が語る「結局のところこの戦争は帝国主義による侵略戦争だった、我々は間違っていたのだ」と彼の父親自身の言葉が印象的であった。ソビエト時代を乗り越え、語られるその言葉は、そのまま我々にも返ってくる言葉なのだった。

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